Atmosphereでは、自由が丘にあるKIAN Art Gallery で行われたゴンド画の絵画展についてのレポートをお届け致します。

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ゴンド画とはインドの先住民族によって描かれる伝統的な民俗画で、農耕生活をしていた彼らが主に村の儀式の際に家の土壁に描いていた絵が原点となっています。

今回の展示を企画された、ゴンド画を日本で紹介しているTOUCH THE GONDの川村華織さんへのインタビューを通して、まだあまり知られていないゴンド画とインドのアート事情について深く探っていきます。

絵画展の際の写真も楽しみながらご覧下さい。

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1.今回の絵画展のキッカケはなんですか?

2013年の7月~2014年の8月まで家族の仕事の都合で、インドのムンバイに居住していました。その間にボランティアとして参加したイベント(Wall Art Festival)で初めてゴンド画に出会いました。ムンバイ郊外の小さな村の学校を使って行われたアートのイベントです。その中で、擬人化された太陽や色とりどりの動物が教室の壁面いっぱいに描かれているのを観て、絵の力強さに衝撃を受けました。そして、イベント終了後にゴンド画について本やネットで調べたり、画家や研究者に直接会いに行って色々なパターンの絵を見せてもらったりするうちに、ゴンド画をぜひ日本でも紹介したいと思ったのが始まりです。

今回の展示会は、そう漠然と考え始めた時期に本帰国が決まり急いで準備しました。画家と話し合い、購入した80枚の絵を額に入れ、引っ越しにあわせて船便に載せました。KIANを運営する石川さんとは別のイベントで一度お会いしていたので、最初に相談にのっていただきました。自由が丘という立地や駅から近い点も理想的でしたし、実際にギャラリーの中を見せていただき、明るい雰囲気やガラス窓からの採光が気に入って即申し込みました。

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2.Touch the Gond の活動について教えて下さい

今はインド中央部Madhya Pradesh 州に「ゴンド画」という絵を描く民族がいることを多くの方に知っていただき、絵を実際に観て愉しんでいただくことを念頭に置いています。民族画というとプリミティブなイメージがありますが、緻密なパターン柄、大胆かつ多様な色使い、奇想天外のモチーフはモダンでもありますし、実際海外ではコンテンポラリーアートとして展示されることもあります。日本ではあまり見ない感じの絵なので、性別・年代問わず愉しんでいただける絵だと考えています。

Touch the GONDという名前は、今回の展示会の準備をしているときに作ったものです。50ほど挙がった候補からDMやフライヤーを作ってくださったデザイナーさんと相談して決めました。ゴンド画を通して、画家の自然に対するまなざし、自然に宿る神様を畏れ敬う気持ちに触れてもらいたい、という想いを込めています。

今後は年に2回位個展という形で展示会を開きつつ、他のイベントや展示施設等でも観ていただく機会を増やしたいと考えています。

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3.実際にBhopalで活動しているゴンド画アーティスト達の生活はどのようなものなのでしょうか?

元々はMadhya Pradesh 州の州都Bhopalから車で5~6時間ほど行った村で描かれる伝統絵画です。Bhopalに出てきて活動しているアーティストは50人程度だと聞いています。アーティストによっても生活レベルは異なりますが、基本的に画業のみで生活が出来ている人は一握りの少数派になると思います。元々土壁に書いていたものを紙に落としたのが20年~30年位前ということもありますが、インドでもそれほど認知は高くありません。他に本業を持っていて、Bhopal市内の伝統工芸・芸術関連美術館等で働いたりして生計を立てている人もいます。私の知るあるアーティストは、Bhopal市内でも貧しい人達の集まっている一角(日本人の感覚からするとスラムに近い)で暮らしています。スラムのイメージがあまりないかもしれませんが、具体的に私が見た家は、一般道から入った入り組んだ路地の中の、生活排水が流れ、野犬、野良ヤギ、野良牛などを避けながら通らなければならないような場所にありました。この方は4畳程度の一間にキッチンのみの家で、奥さんと子どもと3人で暮らしていました。生活は厳しそうでしたが、家族には笑顔が溢れており、子どもがお父さんの絵を描く姿に見入っている姿が印象的でした。また隣近所との行き来も多く相互扶助のコミュニティが成立しているようにも見えました。

 

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4.制作の裏側や、具体的なエピソードがあれば教えて下さい。

 BhopalのTribal Museum(民族博物館)に行った時の事です。受付にいた男性が突然「ゴンド画を知っているか?興味があるか?興味があったら今持っている画を見てもらえないか?」と話しかけてきました。数点作品を見せてもらった中にこれまで知っているゴンド画とは全く違う、ひと際精緻な線描とユニークなモチーフの絵がありました。画家に会いたいと話したところ、翌日自宅に連れて行ってくれました。これがゴンド画を初めて紙に描いた大家Jangarh Singh Shyamの家で、今回作品を展示したNankusia Shyam, Japani Shyamともこの時に出会いました。色々と話をしているうちに、今は亡きJangarhが日本へ過去数回訪問したことがある事、日本を気に入り自分の娘にJapani(ヒンディー語で日本)と名付けた事を聞きました。インド在住の日本人でさえあまり足を踏み入れないインド中央部で日本と繋がりがあるゴンド画家がいる事を知り、不思議な縁に導かれているような気持ちになりました。

 彼らは絵を通して自然に宿る神様に対する敬意を表しています。多くのインド人と同じようにヒンドゥー教を信仰しているのですが、それに自然信仰、木や森の神様に対する信仰が融合しているようです。実際に見えるものをキャンパスに描きとるのではなく、民族に伝わる神話や寓話、頭の中のイメージを広げて絵にするというのも特徴の一つです。私が彼らに聞いた絵の中の一つで、魚とカエルとカニが一緒に描かれているものがありました。これは、魚=遠くを見ることができる、カエル=ジャンプして高いところを見ることができる、カニ=幅広く見ることができる、とモチーフそれぞれに意味があり、全部をあわせて「視野の広さ」を示しているとのことでした。彼らにとって、視野の広さは心の美しさにつながるそうです

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5.今回の絵画展で伝えたかったこと、また今後ゴンド画を通して伝えていきたいことは何ですか? 

絵を購入してくださった方にお願いして任意で飾ったところの写真を送ってもらっています。一つは画家に日本人の声をフィードバックするため、もう一つはサイト上で紹介するためです。Touch the GONDのWebサイト上にゴンド画を飾った部屋の写真を掲載しています。インドの村の絵が、洋室和室問わずそれぞれの部屋に溶け込んでいる様子を観ていただきたいです。また、部屋に植物を取り入れにくい方でも、画家達のまなざしを通して自然を感じてもらえたら嬉しいです。

一方でインドの中でゴンド画の価値が認められ画家達がもっと誇りを持って絵を描けるようになれば良いなという想いもあります。先述の通り、インド国内でも認知が高くなく、実際インド人と話をしてもゴンド画の存在を知らなかったという人も多くいます。インドの富裕層、中間層などはお金があっても国内の絵ではなく、欧米の絵を購入しがちという事情もあり、国内の民族画を大事にする風潮はまだ強くありません。ただ日本の伝統工芸と同じように海外で愛されることで国内での価値が高まることはあると思うので、まだまだ小さいですが、活動を通してインド国内の眼がゴンド画に向くきっかけづくりをしていきたいです。

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