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REVIEW: 水野健一郎、早川モトヒロ、牛木匡憲による展示「OUTERSIDE」

300人以上の来場者を迎え、5月16日〜6月7日まで水野健一郎早川モトヒロ牛木匡憲による展示
『アウターサイド』CALM&PUNK GALLERYにて開催された。

 

この3人の共通項といえば、作品に必ず超人(怪人、宇宙人、人造人間のようなもの)が登場し、その造形は
60 年代~70 年代の特撮ヒーロー全盛期のものと類似していることだ。「超人、怪人、宇宙人、人造人間」と
聞いて、個人的には人間に近い形をしながらも顔や手というものは、はっきりと付いていない少しダークな
色彩の不気味な物体を想像していたが、今回の展示はどこか愛着を抱けるような超人が多く登場した。
色彩が鮮やかであったり、悪い怪人だけではなく、ヒーローとしての怪人も登場し、まるであの空間の中で
3つの新しい特撮ヒーローのストーリーが展開しているようだった。

 

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今回集まった作家3人は、「超人」という共通項を持ちながらも、60年代生まれの水野健一郎、70年代生まれの
早川モトヒロ、80年代生まれの牛木匡憲と一回りずつ世代が分かれている。それぞれ違った視点や価値観を
持って描かれた作品は、各々規則性のない自由な展示方法で表現された。

水野健一郎の場合は、キャンバスに描かれた絵を展示するだけでなくテープを使いギャラリーの壁にも絵を
描き、キャラクターが続々と登場する映像も流したりと様々な手法を用いていた。今回の展示だけに
限ったことではなく、他の展示でも様々な手法に挑戦しているきっかけについて
「手法は作品を頭の中のイメージに近づけるためのものです。たいていの場合イメージと手法はセットに
なっていて、イメージを明瞭にすれば手法も見えてきます。また、手法は制作プロセスにおけるストレスを
最小限に抑えるためのものでもあります。僕の創作は常に怒りと苛立ちを伴うため、極度に体力を消耗します。
一生描き続けるためにはそれらの感情を抑制する必要があるのです。そしてもうひとつ重要なのは、僕が
飽きっぽいことです。飽きても作り続けるために手法を変えるのです。」と話した。

 

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早川モトヒロの場合、1つ1つのキャンバスにそれぞれ違ったストーリーが繰り広げられているような
繊細なイラストの作品が並んだ。そのアイディアがどこから浮かび上がってくるのか伺うと
「僕の頭の中で存在している風景やキャラクターが沢山あり、それは突然思い浮かびます、僕が子どもの
時に見た夢でみた風景か現実に見た風景なのかとても懐かしい感覚です。アイデアはまるで釣りをしてる様で、
入れ食いの日もあれば一匹しか釣れない日もあったりです、一日の半分は想像の世界にいる気分なので考え抜いて
というよりは空中を浮遊してるアイデアを拾い集めてる感じで描いてます。感覚的には、こっちの世界ではなく
あっちの世界に行って描いてる感じです。キャンバスに描くときは7割完成した状態が見えてて残りの3割は
アドリブです。」

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牛木匡憲は、特徴的な手書き感を残すようなムラのある塗り方を始めたきっかけについて
「私が絵を描き始めたとき、もうすでにコンピューターで描くことが流行っていました。私も何の疑いもなく
7年くらいコンピューターで絵を描いていました。けど、何でも描けるし、誰でも描けるし、その予定調和に
徐々に飽きてきてきました。そこで最初に使ったのが水性マーカーでした。どうやってもムラやにじみが出て
コントロールできないハプニング性が逆に新鮮でした。今回の作品はその水性マーカーにより近いムラが出て、
発色の良い絵具を探して描いています。そして今回初めて意識したのはそのムラ感に対して均一感やツヤ感を
重ねることでコンピュータで描くときのレイヤー感が出せたらと思って描きました。レイヤー感というのは
僕らデジタル絵ネイティブな者にとってはとても直感的な技法で、それを取り入れ、RGB的な発色を出すことで
今っぽいアナログ絵を表現できたらと思っています。ちなみに今回水性マーカーを使っていない理由は
耐久性と発色の悪さです。」と話す。

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また、今回の展示に水野健一郎のファンの方々が多く来場したように、水野健一郎と一緒に展示を行えた感想を
早川モトヒロと牛木匡憲に伺ってみた。

一回り下の早川は「まず最初にこのアウターサイド展をやり終えたと言うことは僕にとって0から1なれた
気持ちです、理由は水野さんと展示が出来たからです、僕たちサブカルアート界のお手本である水野さんと
展示できたからです。水野さんは90年代後半から知ってます。水野さんの今回の展示は僕たち二人のバランスを
考えた上での展示で一番大変な立ち位置だったと思います。展示の見せ方ですが、ギャラリーに入った時の
全体のスッキリ観せる空間創りにセンスの良さを感じました。今回の展示で一番好きだったキャラクターがDMに
使った水色の関節のない星人です。あのキャラはそう簡単には生まれないキャラだと思います。
ヤバイやられたって感じです!グッときました。」と感動を語った。

また牛木の作品については「牛木さんはキャラクター作りのセンスが抜群で僕のツボです。牛木さん本人も
かなりツボだったりでかなり個性的でユニークな人です。牛木さんから切っても切り離せないのが昭和と言う
キーワードです。これは僕も同じなんですが昭和の玩具・アニメ・特撮を感じさせるキャラはかなりヤバイです。
A圾特撮よりB級特撮c級特撮に反応してるんだろうなと思いました。あと正義と言うより悪役が好きなんだろうな
と思います、牛木さんのキャラクターはみんな悪役だと思います。悪役のカッコ良さはヒーローより全然
カッコイイよくて魅力的だからです。色彩で考えるとまるでファッションショーに出てきそうなぐらいな
鮮やかな色彩で花を見てる感覚です。」

 

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最年少の牛木匡憲は先輩2人について「水野さんは頭脳派だと思います。とにかく考え続けている人で手を
動かすのはほんの一瞬という印象です。作品の全てがコンセプチュアルで難解、見ていると馬鹿にされた気分
になります。それがともてスリリングでいつもワクワクさせられます。しかもとても器用でファッショナブル。
水野さんの作品に対しては共感よりも憧れの方が強いです。

早川さんは水野さんとは対極の直感的な人だと思います。描きたいものを何の疑いもなく描き続けているから
こそでてくる自分の一番内側にあるカタチやモチーフがちゃんと揺るがない個性となって画面に存在していると
思います。だから早川さんの作品をみると少し恥ずかしくなり、見てはいけないものを見てしまった気持ち
になります。そしてそれは男性なら小さいときに誰でも経験しているものであり、もれなく私にも
存在しています。そこに共感があります。

二人に共通するのは人格的にとても思いやりがあり、ナイーブな一面があることだと思います。その結果、
共通して作品に「かわいらしさ」それを私はとても愛しています。」と敬愛の眼差しで見ていた。

 

特撮ヒーローのラストシーンのように、多くのファンに見守られながらギャラリーを去った彼ら超人たちと
またいつ出逢えるのか楽しみだ